たこぶね日記

貝殻の外へ触手を伸ばそう。雑記ブログです

Google Scholarで気になる論文を読んでみた

卒業論文を書いており、Google scholarで先行研究の資料を集めることが増えてきました。集中力が切れると「部活動」や「ラーメン」といった、その場で思いついた単語を検索して遊んでしまいます。運動部の論文は多いわりに文化部の論文は少なく、「ラーメン」で検索すると建築系の論文が多くヒットします。

一般公開されている論文で、興味を持ったものをいくつか載せておきます。

 

注射恐怖の重症例に対するエクスポージャーとApplied Tension(実践研究)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbt/33/2/33_KJ00008938101/_article/-char/ja/

Cl(クライエント)は20代前半女性で、医療系大学の学生。以前から注射や針に対する恐怖があり、専門課程が始まると症状が悪化して病院を訪ねました。予防接種や採血、針、外傷の写真などに恐怖を感じて血圧が急激に下がり、過呼吸や失神を起こすため、関連する言葉の読み書きや会話、イメージも困難でした。

治療として、筋緊張訓練(スクワットの姿勢を取らせて血圧を上げる方法)を行い、「針」や「注射」という語句が入った替え歌を歌ったり、手術の映像を観たり……と様々な方法が記されています。家庭の事情で治療は中断しましたが、彼女は1年後に医療現場に就労しています。

ググってみると、エクスポージャーは行動療法の一種で、恐怖や不安の原因になる刺激に段階的にさらして慣れさせる方法だそうです。治療者とともに様々な方法を試し、少しずつ恐怖症を克服していくのが印象に残りました。

 

2ちゃんねるを対象とした悪口表現の抽出

https://scholar.google.com/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=%E6%82%AA%E5%8F%A3&btnG=#d=gs_qabs&u=%23p%3DWzw6a4xDdLYJ

ネット上に書き込まれる悪口を自動で管理するため、2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)から悪口を集めて、悪口表現の辞書を作る研究です。

自動で毎日約2000記事を解析し、約6500の悪口文を収集できたそうです。収集された文に「いちいちひねくれた言い方すんなや キモイ奴だな」「こんなんでいちいち騒ぐなボケカス。」などが挙がっています。

評価実験として悪口文とそうでない文を入力し、正確に悪口を抽出できたか人手で判断します。新たな悪口を獲得しようとすると、悪口ではない表現も検出されるのが問題。今後も手法を改良し、辞書の大規模化と精度の向上を目指す、と締めくくっています。

……ネット上で口論を目にしたとき、この論文を連想するようになりました。モニターの向こうで淡々と文を集める機械と、新たな表現を見つけて喜ぶ人の姿を想像すれば腹が立たなさそうです。

 

平安貴族の遅刻について一摂関期を中心に一

https://www.jstage.jst.go.jp/article/timestudies/1/0/1_31/_article/-char/ja/

平安時代の朝廷の儀式は時間が決まっていましたが、貴族には遅刻や早退が多いそうです。原因として、時刻を表示する装置がなく、道路などが整備されていないこと。貴族は夜型で不規則な生活を送っており、物忌を優先したことなどが挙がっています。

時間が共有されていないのに「時間を守れ」という建前があったために遅刻が増えたそうです。時間の管理が陰陽師の役目だったというのは意外でした。

 

サディズムとスポーツにおける競技成績との関連―駆け引き上手を媒介変数として

https://www.jstage.jst.go.jp/article/personality/27/3/27_27.3.7/_article/-char/ja/

サディズムは元々、性的な逸脱や猟奇的な犯罪をする傾向として扱われていましたが、近年では「日常生活で他者が苦しむ姿を喜ぶ傾向性」として扱われています。あまり良いイメージはありませんが、相手の弱点を突くことが必要なスポーツに向いているんじゃないかと調べた論文です。

体育を専攻する大学生339名を対象に、サディズムと駆け引き上手の尺度、大会出場の成績の関連を調べています。その結果、1vs1または2vs2の競技では、サディズム→駆け引き上手→競技成績 の関連がみられました。

文化系の人間には無縁の話ですが、環境によってはサディズムが役立つこともあるようです。個人的には、マゾヒズムと競技成績の関連も調べてもらいたいです(マゾヒズムを測る尺度がないのかもしれません)。

 

夢の中で感じる感情の頻度

https://bunkyo.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_view_main_item_detail&item_id=1162&item_no=1&page_id=29&block_id=40

夢の中では、肯定的な感情より否定的な感情が多いそうです。単に否定的な感情が印象に残りやすいからだという説や、夢がトラウマの処理や脅威へのシミュレーションに使われるからだという説があります。

大学生208名を対象に、夢の内容や感情などのアンケート調査を行いました。

その結果、肯定的、否定的を問わず、感情の体験が豊富だと夢は鮮明になる。肯定的な感情が多い人は、夢を思い出す頻度が高く、夢の中で自分から行動する傾向がある。明晰夢を見ることもやや多い。一方、否定的な感情が多い人は、追いかけられる夢や悪夢が多く、夢の中でにおいを感じることがやや多い、ということが分かっています。

私は他人の夢の話が好きなので、こういった研究があることは面白いと思いました。

 

私は全くの素人ですが、論文を読むのは楽しいので、今後も時間があるときに探して読みたいです。